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獣医マスター続編。

お花見数日後のお話です。
そしてまたまた新キャラ登場。
オリジナルキャラ出ばり捲くりなサイトでスミマセン。

「よ!久しぶり~」

 本日は病院がお休みの日。
 いつものようにマスターとお茶を囲みながら、リビングでDVD鑑賞会をしていた昼下がりの午後。
 その人は、嵐のように前触れも無くやってきた。




「兄貴この間ウチに顔出したんだって?ったく俺が爺に囲まれるだけで潤いのまったく無い定期集会に参加してていない時狙って来んなよ!せっかく新に作曲したオレの素晴らしい読経ソングをお披露目してやろうと……あ、この子がカイト?おお~お袋が言ってた通りスッゲェ可愛い顔してんな!アレからお袋ってばカイト君カイト君煩くってさ~一人くらい可愛い息子が欲しかったわ~って、たく元が親父とお袋なんだから、むしろ俺達マシな方だよなぁ?つ~ことでハジメマシテ、杜乃兄貴の弟で『慶(ケイ)』ってんだ。よろしくな?」




 玄関を開けるなり矢継ぎ早に喋り出したその人は、マスターの弟さんだった。







              どーぶつのお医者さんなマスターとお坊さん






「……慶、あれほど来る時は前もって連絡をしろと」

「いや~急に近くで一件法事が入ってさ。んで時間空いたからせっかく近くまで来たし寄ってみた」

 ホラだから正装してんだろ?と着物に似た和服(法衣というらしい)を指差して笑う弟さんに、マスターは心底呆れてますと言わんばかりの大きな溜息を吐く。

「お前……人の話訊いて無いだろ」

「面倒そうな話は半分訊いて後は流す、お年寄りとの会話の基本だ」

 じゃなきゃ俺みたいな若造が坊さんなんてやってられん、と胸を張る弟さん。
マスターの額に交差点がちょっと浮かんでるのは、多分気のせいじゃないよねぇ?

「……俺は年寄りと同位か?」

「いやいや、俺の敬愛するお兄様ですよ杜乃お兄様♪」

「…………。」

 え~と、なんというか。
 確かにお顔はどことなくマスターと似ているけれど、なんだか性格は随分と違うみたい。
 マスターはどちらかというとあまり積極的に喋ったりしない(実際は単に面倒くさがりなだけだけど)が、弟さん―――慶さんはこちらが一喋るのに対して十返すタイプの方らしい。
お寺のお坊さんというから、もっと無口で厳粛な方だとばかり思っていたんだけど(お花見の後、お寺についてグーグル先生に色々とお訊きしました)、慶さんは予想に反してとっても明るくて気さくな方だった。


 とりあえず立ち話もなんだしとリビングへ案内し、新たにお茶を淹れる。
本当はココアにしたいところだけど、慶さんもいるので一人だけ別の飲み物を用意するのもなんだしと、コーヒーにした。
ただし、オレのだけは砂糖がたっぷり入ったカフェオレ。オレはこうしないとコーヒーは飲めない。

「はぁ~にしても、まさか兄貴がボーカロイドを手に入れるとはなぁ。俺としてはスッゲェ予想外」

「安心しろ、俺もだ」

「ハァ。予想外なのに買っちゃったんデスカ?」

 お茶を飲んで一息入れたところで、マジマジと真正面から見つめられ(というか、観察に近い気がする)、俺はその視線になんだか居た堪れない気持ちになって、視線から逃れるように下を向いて、中身が半分になったマグカップを両手で弄ぶ。
 そんなオレにマスターは苦笑いを零し、安心しろと声を掛けてくれる代わりに頭を撫でてくれた。
 あの、弟さんの前なんですが……いえ、うれしいですけど。

「ああ。」

 この間も思いましたが、返答がシンプル過ぎやしませんかマスター。
 確かに言い難い内容ではありますけど。
 けれど弟さんはその短いやり取りの中でも、何か感じることがあったらしい。
 無言でミルクを少量落とし込んだコーヒーを一口飲み、カップをソーサーに置くと同時に、度肝を抜くような一言を口にした。

「ふぅ~ん……なんか、訳アリっぽいな」

 しかも結構内容が面倒そう。

「!?  っ」

 慶さんの口から放たれたその台詞に、オレは反射的に顔を上げる。
 今の会話の流れで、どうして訳ありだってわかったんだろう……なんだか急に慶さんという人が怖くなって、オレはフルフルと身体を小刻みに震わせた。

「……慶。安易な発言をするな。カイトが怯える」

 そう言ってマスターは震えるオレを静かに引き寄せ、抱き締めながら何度も何度も優しい手つきで背中を摩った。服越しに伝わるマスターの体温に安心したのか、身体から少しずつ緊張が解れていく。それでもまだ安心し切れなくておずおずとマスターに縋り付くと、頭の上で小さな笑い声がした。
その一部始終を目前で見ていた慶さんもようやく自分の失言を実感したのか、慌てて両手を合わせて頭を下げる。

「悪ぃ、そういうつもりじゃなかったんだけどさ。え~と、カイトもごめんな?別にお前を責めてるとかそーゆーわけじゃないから」

「…いえ、大丈夫…です」

 本当はまだ幾分恐怖感が残っていたのだけれど、ちゃんと謝ってくれている人を無碍にも出来なくて、オレはマスターに縋り付いたまま力無く首を横に振った。

「何ナチュラルに呼び捨てにしてやがる。今日初めて会ったばっかりのクセに」

「だってカイト、反応がイチイチ可愛いからつい」

「お前はついで馴れ馴れしい態度を取るのか?」

「いや~普段はそんなことしねぇよ。いつも相手してるのは礼儀に煩い爺婆ばっかりだし。でもカイトはさ~なんかこう、見てるだけで俺の奥に眠る嗜虐心が煽られるっての?」

「エエッ!?」

 なんか小学生が好きな子を苛めたくなるって感覚かも~と頬を染めて微笑まれてしまい、先程とは違う驚きと恐怖に見舞われたオレは、再びマスターに縋り付く。
マスターもオレの心情を把握してくれたのかギュッとオレを抱き締めると、底辺を這うような声音で敬さんに帰還命令を突きつけた。

「お前もう帰れ、今すぐ」

「やだな~冗談だって♪」

 本気に取るなよ~と手をヒラヒラさせて笑っていたが。



 (あの、とても冗談には見えなかったのですがオレの気のせいでしょうか?)

 (いや、今のアレは多分マジだ。気をつけろカイト)

 マスターの腕の中で涙目になりながら、弟さんに聞こえないように小さな声で問うと、眉間に大きく皺を寄せた顔でそう返されてしまい、俺はますます顔を青褪めさせる。




 マスター……オレ、幽霊以外にも苦手が出来ちゃったかもしれないです。

 マスターの弟さんだから出来れば仲良くしたかったのですが、友好関係を築くのはちょっと時間がかかるかもしれません。









 マスターの弟さん―――慶さんとの出会いは、そんな複雑な心境から始まった。






                                         2008.0425 AK





















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