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でけました~
書き上げてビックリしました~






ヤンデレフラグが立つかと思った(バクバクバク)


どうやらヤクザマスターのカイトはヤンデレ要素配合しているらしい。。。。
私もとうとうヤンデレに手を出すのか(遠い目)



「お前……本当にいいのか?」

「ハイ、」


 僕も背負いたいんです。
 貴方が組に命を賭ける証として入れたように、僕も貴方との確かな絆が欲しい。



 ボーカロイドとしてではなく、貴方を愛する『もの』として。





 黒揚羽2





「勿体ない、せっかく綺麗な肌してるのに」

 本当にいいの?元に戻せないよと刺青師の女性が何度も確認するが、僕は頑として首を横に振らなかった。
 これはマスターに言われて決めたことじゃなく、僕自身の意思だから。

「はい。お願いします」

 五回ほどそんなやり取りを繰り返して、ようやく僕の気持ちが変わらないことを悟ったのか、刺青師の女性は盛大な溜息を吐きながら、僕の後ろで静かに成り行きを見守っていたマスターに声を掛けた。

「…アンタも罪作りな男だねー。こーんな可愛い子に刺青彫る決意なんてさせちゃって」

「俺も止めたんだが聞かないんだ。仕方ないだろう」

「それだけアンタに惚れてるんだねー」

「ハイ、愛してますから」

 にこやかな笑顔と共に肯定すれば、女性は一瞬呆気に取られたような顔をして、それから声高らかに笑った。

「アッハッハッ!盛大な惚気をどうも~」

「……カイト、」

「事実ですから」

 マスターが怒っているような、苦虫を噛み潰したような複雑な表情で僕を見たけれど、取り消すつもりなんてサラサラ無かった。
 だって、僕がマスターのことを主従関係ではなく恋愛感情の意味で愛してるのは、本当に本当だもの。

「ククク…ずいぶんイイ性格に育ってるじゃないか。強情なとこなんてアンタにそっくり」

「静流……茶化すな」

「それこそ事実でしょう?諦めな」

「諦めて下さいマスター」

 刺青師の女性―――静流さんと顔を合わせてニッコリと微笑むと、マスターは心底疲れたように大きな溜息を吐いて、整髪料で整えられた頭を掻き上げた。

「お前等な……まぁいい。カイト、最後にもう一度だけ訊く。いいんだな?」

「ハイ。これは俺が望んだことですから。マスターと同じものを、僕も刻みたい」

 これは証。
 たくさんのKAITOの中で、僕だけがマスターの所有物である証。
 最初からボディに刻まれている無機質な認識番号とは違う、僕自身がこの身体に刻むことを決めた証。


 マスターの漆黒の瞳が、静かに僕を見つめる。
 綺麗な綺麗な、澄んだ瞳。
 これまで何人かの人間を見てきたけれど、マスターほど綺麗で澄んだ目を持つ人は見たことが無い。
 純粋で一途で、とてもまっすぐな瞳。
 その瞳に見つめられるだけで無いはずの心臓がトクトクと高鳴って、自然と体温が1.5度上昇する。

 マスターの職業を世間の人はとても嫌がるけれど、マスターは自分の仕事に誇りを持って生きているし、そんなマスターが僕は好き。
 殆ど傍に居てくれないし、しょっ中怪我をして帰ってくるし、明日の保証すらない、そんな殺伐とした毎日を送っているような人だけれど。
 僕に歌をくれる時、抱いてくれる時はとても優しくて、短い時間の中でどれだけ僕を愛しんでくれているかがわかるから。




 でも僕は、マスターの一番にはなれない。

 マスターの一番は組の組長さん。

 マスターはその人のためなら、命も厭わない。

 愛とは違う、『仁義』というものらしい。





 僕がマスターのところにやってきて、最初に言われた言葉。

『俺はいつか、お前を置いて死ぬだろう。それが何時になるかはわからない。今日か明日か……ずっと先になるかは誰にも判らん。だが、常人に比べればその可能性はかなり高い』

 マスターは、自分の職業のことを包み隠さず教えてくれた。
 自分がヤクザであること。
 舎弟達を取り纏める立場にあるということ。
 組長を守るために、自分は生きているのだということ。
 いざとなれば組長の盾となり刀となり……命尽きるその瞬間まで、組のために働くのだと。
 僕にはどうしてマスターがそこまで『組長』という人のために尽くさなければならないのか理解が出来なかったけれど、僕に丁寧に話してくれているマスターの瞳は真剣そのもので、僕は『何故ですか』と訊ねられなかった。





『悪いなKAITO。こんな無責任な奴がマスターになっちまって…』





 ただ、僕はいつか一人にされてしまうんだと―――それだけは理解した。








 僕達ボーカロイドにとって、マスターは絶対的な存在だ。
 マスターが世界の全てであり、存在意義でもある。
 それなのにマスターは、来たばかりの僕に『居なくなるかもしれない』仮定を話した。
 最初にそれを話してもらった時、なんて残酷な人だろうと思った。
 来たばかりで、どんなマスターだろう、何を歌わせてもらえるのだろうと、期待に胸を膨らませていた僕を、一気に絶望の淵へ突き落とすくらいには。



 でもそれが、マスターなりの優しさだと知ったのは、もう少し後のことで。

 それを知った僕は、なんて不器用で純粋な人だろうと思った。






 マスターは知らない。

 僕は人じゃない、無機質なロボット。
 人間に作られたヒューマノイドタイプのボーカロイド。
 無垢な状態で生まれて、基礎的な情報だけを詰め込まれて出荷されるけれど、マスターと生活を共にしていくうちに、少しずつ情報を得て成長をする。

 それは、確かな事実。


 でもね、マスター。

 僕はマスターに買われて、広い部屋に一人残されてされて、その寂しさを紛らわせるために色々学んだんです。
 世界の綺麗なもの、汚いもの、色々と学んだ。
 いつまでも無垢な人形のままじゃ、マスターの傍に居られないと思ったから。
 だから僕は、マスターが思っているほど綺麗な存在じゃないし、むしろ強かだと思う。
 少しでもマスターの傍に居られるよう、少しでもマスターの心に『僕』という存在を刻み付けられるようにと、考えて判断するようになってしまっているのだから。









 僕はマスターの一番じゃない。

 でもいつか、貴方の一番になりたいんです。

 『仁義』というものよりも、上に居座ってやりたいんです。





 そのためならばこのボディを傷つけるくらい、とても些細な事なんです。











「……わかった。静流、」

 僕の瞳をジッと覗き請うようにしていたマスターは、やがて視線を逸らすと、目を閉じて静流さんの名を呼んだ。
 それは、始めていいという合図。

「もう準備は出来てるわよ。何時でもオッケー」

 サイドテーブルには、刺青を施す際に用いるのであろう器具がズラリと並べられていて、束ねられた針の先端が、オレンジ色の証明に照らされ鈍く光っていた。
 マスターが言うところによると、今時全て手彫りで刺青を施す刺青師は珍しいらしい。筋のみ機械で描き暈しなどは手作業でやるのが一般的だが、静流さんは全てを手作業でするようだ。その分時間がかかるが、その出来栄えは芸術とも云うべき仕上がりだという。
 ちなみにマスターの背にある黒竜も、静流さんの作だ。

「じゃあカイト君、上着とインナーを脱いで。消毒するから」

「ハイ」

 さっそく立ち上がってコートを脱ぎ、インナーに手を掛ける。

「何度も言うけど、想像を絶する痛みを伴うよ?」

「覚悟の上ですから」

 なんせ大の男でも脂汗流すくらいだからねと笑う静流さんに、僕は涼しい顔で返す。
 そんなことは百も承知だし、散々マスターに言われ続けていたので今更脅しにもならない。
 本当は痛覚を遮断することも可能だけれど、それでは意味が無かった。
 苦痛を乗り越えた上で、マスターとの絆を手に入れたかったから。

 インナーも脱いで、静流さんの前に置かれた丸い椅子に背を向けるようにして座……ろうとしたのだけれど、それより前にマスターはその丸椅子を乱暴な手つきで横に退けると、近くにあった一人がけのソファを持ち上げ、そこに置いて座ってしまった。

「……ますたー?」

 その意図が判らなくて首を傾げると、マスターはニヤリと笑って両手を広げた。
 まるでココにおいでと言わんばかりの行動に、僕は思わず目を瞬かせてしまう。
 横ではマスターの真意に気付いたらしい静流さんが、「見せつけてくれるねぇ」と心底可笑しそうに笑っていた。

「早くしろ、手が疲れる」

「え、アッ、は、ハイッ」

 訳がわからず、それでもマスターに下されて慌てて近付くと、アッと思う間もなく強引に腕をマスターと向かい合うように、膝の上に座らせられてしまった。

「ま、マスターッ!?」

 普段なら他人が居るような場所でマスターはこんなことはしないのに、どうして?
 
 どうしても答えが導けなくて問うような目でマスターを見ると、マスターは触れるだけの軽いキスを落とし、優しい手つきでその胸に僕の身体を抱き寄せた。

「爪立てても、噛み付いてもイイからな」

「!?   っ」

 だから一人で我慢するな…と耳元で囁かれ、ビクリと身体が震える。

 どうしてマスター?
何故そんなことを言うんですか?

 マスターが何故そんなことを言ったのかわからなくて、慌てて顔を上げようとしたけれど、マスターが僕の頭の後ろを押さえているため上げられない。
 すると僕の戸惑いに見かねた静流さんが、笑いながらマスターの行動の意味を教えてくれた。

「あのねカイトクン。この人はアンタが目の前で痛がってるのに、一人悠然と構えてられるような人じゃないんだよ」

「え……?」

「…静流、」

 余計なことを……というマスターの呟きが耳に届いて、静流さんの言っていることが本当なのだと理解する。


「……マス、ター?」


 少しだけ……自惚れてもいいでしょうか。
 マスターの身体は組のものなのに、その身体を傷つけてでも僕を選んでくれたんだって、勝手に思い込んでもいいでしょうか。

 マスターにも僕にも、今の体制では互いの顔は見えない。
 けれどマスターは僕の呼び声に対して何も言わず、ただ優しく髪を撫でてくれた。


 それだけで十分だった。

 それだけで、どんな痛みにだって耐えられる。



「じゃあ、始めるわよ?大した大きさじゃないから今日中には終わると思うけど……時間がかかるのだけは覚悟してちょうだい」

「―――ハイ」

 僕はマスターの腕に抱き締められながら、そっと目を閉じた。

























『ああ、綺麗だな……お前の白い肌には、黒揚羽がよく栄える』




 僕の背には、漆黒の羽に蒼い模様の黒揚羽蝶

 それは、僕とマスターを繋ぐ絆であり証

 蝶のようにヒラヒラと舞う、貴方の背に彩り続ける模様の如く

 僕は―――貴方に寄り添い続けるのです




                                        2008.04.26 AK





















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