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突発マスカイです。
どの設定にも準じません。

暗いです。
ドン暗シリアスです。
甘度は…多少あるけど、シリアス過ぎて泣けてきます。
ぶっちゃけ死にネタあーんど、若干グロシーンの描写?みたいなものがあるよーな無いよーな感じですので、お嫌いな方は軽くスルーしていただけると助かります。

大丈夫!という方のみお進み下さい。
                   Waiting For You







 時刻は18時45分。

 連絡がない時、マスターは必ずこの電車に乗って帰ってくる。
 改札から手を振って、僕の大好きな優しい笑顔を浮かべながら、『カイト』と僕の名前を呼んでくれる。

「お帰りなさい、マスター」

 改札の外から笑顔で出迎えれば、大きな手でくしゃりと頭を撫でてくれた。

「ただいまカイト」

「今日もお仕事、お疲れ様でした」

 家までは徒歩10分ぐらいだから、マスターと一緒に並んでのんびりと帰る。 
 今日はマスターの好きな肉じゃがですよと告げれば、俺よりも頭半分だけ高い位置で、嬉しそうに笑った。

「カイトの料理の腕、どんどん上達していくね」

「マスターに喜んでもらいたいですから」

「君はボーカロイドなのにねぇ」

「ボーカロイドだからこそ、マスターに喜んでもらって、褒められたいんですよ」

 マスターにもっと好きになってもらえるように。

 少しでも長く、マスターと一緒に過ごせるように。


「大好きです、マスター」

「うん。俺もカイトのこと、好きだよ」


 そう言ってもらえる事が、俺にとって何よりの幸せ。
 ただの機械の塊なのに、こんなに幸せで良いのかなって不安になるくらい、毎日が幸せで……

 変わり映えの無い毎日。
 夜に少しだけ歌って、後は家事をこなして、マスターと一緒のベッドで眠る。
 日曜日だけは特別で、朝から調教してもらったり、外出をしたりする。
 平凡で、でもとても大切な日々。

 ずっと続けば良い。

 ううん、ずっと続く。

 僕がマスターに飽きられない限りは、ずっと続く。

 抱き締める手が無くなって。
 僕を呼ぶ声が無くなって。
 僕を見つめてくれる事が無くなるその時までは続いていく。

 マスターに捨てられない限りはずっと続くと、そればかりが唯一の不安で。
 そのたびにマスターに『俺がカイトを捨てるなんて、絶対無いよ』と、抱き締めて耳元で囁いてもらった。

 信じたい。
 信じたいけれど、人間は機械と違って『絶対』なんて無理だということも、知っているんです。
 僕達はあくまで人間のために作られた道具に過ぎないから、イレギュラーでも無い限り、マスターの命令には『絶対』だけれど、人間は数多の感情に左右されて、翻弄されて、交わした約束すらも破ってしまうことを、僕は知っているんです。

 だから、こうしてマスターが僕を捨てないことを、何度でも試してしまう。
 何度でも、捨てないと囁いてもらいたくなる。
 でも、やっぱり不安なんです。
 少しでも長く貴方といられる時間を確保したいんです。
 アンドロイドらしからぬ感情だと判っていても、止められないのです。
 僕は本当に貴方が好きで、一緒に居たくて。

 















 だから。






















――― こんなにも唐突に別れが来るなんて、思いもしなかった……





















『あの子、今日も来てるわね』

『ああ、**さんのボーカロイドでしょう?……ホームから突き落とされて、即死だったんですってね』

『犯人は未成年の子なんでしょう?動機が『ムシャクシャしてたから、誰でも良いから殺したかった』なんてねぇ…怖い世の中だこと』

『あの子も可哀想ねぇ。マスターが死んだって告げても信じないんでしょ?』

『落ちた直後に電車がホームに入ってきて、原形留めてなかったらしいわよ。直接対面して無いから、受け入れられないんでしょうね』

『**さんて、身寄りが無かったんでしょ』

『らしいわねぇ。だからあの子の引き取り手も居ないらしくって』

『…だからああして、ずっと帰ってこないマスターを待ってるのねぇ』

『まるで【忠犬ハチ公】と同じね』

















 ある日、いつまで待ってもマスターが帰ってこなかった。

 一時間待っても、二時間待っても。

 携帯を見ても、着信履歴は無くて。

 その間、やけに駅の中が騒がしくて、耳を劈くほどのサイレンの音とか、眩しいほどのライトが視界を横切ったりした。
 なんだろう?と思ったりもしたけれど、それよりもマスターが帰ってこないことの方が僕には重要なことで。

 最後の電車が駅を通り過ぎて、それでも……マスターは帰ってこなかった。






 それから二日が経過して、それでもマスターは帰ってこなくて。
 連絡も無いから、僕はいつもと同じ時間にマスターを迎えに行った。
 マスターは絶対に帰ってくるから、ちゃんと迎えに来てないと。
 『待たせてゴメンなカイト。ただいま』って、僕の大好きな笑顔で言ってもらえるように、僕はひたすら待った。

 けれど来たのはマスターじゃなく、マスターの同僚という方で……









『君が**のカイト君、だね。その様子だとまだ知らされて無いみたいだけど………』









 
 その後に続いた言葉は、上手く聞き取れなかった。

 可笑しいな、聴覚センサーが壊れてしまったのだろうか。
 でも他の音は普通に聞き取れる。
 周囲の雑踏も、駅のホームのベルも、電車が発信する音も。
 ただ、マスターの同僚さんの声だけが、ちゃんと聞き取れない。










『**は、この間の事故で…死んだんだ。もう、この世にはいないんだよ?』









 そう、聞こえたような気もしたけれど、多分間違いだ。























『あの子、もう二ヶ月近く、来てるわね』

『同僚の方が、マスターが死んだことを教えに来てくれたみたいだけど、信じようとしなかったらしいわよ』

『でも、いつまでもああして待ってられるのも、ねぇ』

『マンションの大家さんも困ってるらしいのよ。何度話しても出て行ってくれないって。家賃も今月分で切れるらしいし』

『アラ…じゃあ可哀想だけど』

『そうねぇ、可哀想だけど……』

















「固体ナンバー01256-6359-**THOL026-KAITO-だね?」

「……ハイ、そうですが…」

「持ち主死亡のため、君を回収しに来た」

「え……」


 両腕を捕まれ、力任せに引き摺られる。

 その腕の痛みに、俺はようやく全てを悟った。









(ああ、そうだったんだ―――)






 僕は、マスターに捨てられたわけじゃなかったのだ。








『あら…とうとう誰かが通報したのかしら』

『まぁ、仕方ないわよね。あの子は可哀想だけれど』



 何の異常も無かった聴覚センサーが、周囲の声を拾う。
 可哀想と言いながら、その顔が浮かべているのは笑顔。


 マスターとは全然違う、なんだか嫌な笑顔。




 だから僕は引き摺られながらも無理矢理立ち止まり、振り返った。







「僕は、可哀想なんかじゃないですよ」





 まさか聴こえているとは思いもしなかったのだろう。
 驚いたような顔をして両目を見開く人間に、マスターには及ばないけれど、でも晴れやかな笑みを送る。



「僕は、全然可哀想じゃないです」



 そう、僕は可哀想じゃない。







 だって。


 だってこれでようやく……













 ――― 僕は、マスターの元にいけるのだから。








                                          2008.10.13 AK



 突発です。
 急に書きたくなりました。
 ラストのカイトの台詞がどういう意味なのかは、皆様の捉え次第ということで(汗)


こんなラストはイヤァァァァァ!!!という方は、此処をクリック!






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