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冬コミ発行予定、マスター×カイト本『螺旋流華(らせんるか)』のお試しです。
ちょっとヤンデレ気味なマスターですので、苦手な方はお戻り下さい。

おkな方のみ、このままお進み下さい。




僕は、何故此処にいるんだろう…

『オイ、早くしろ!後が支えてんだからっ』

 何故、彼らはあんなにも息を乱して興奮しているのだろう…

『いや…やめて、やめっ……    』

 何故、僕は……





『イヤアアアアアアアアッッ!
マスタァァァァァーーー   ッッッ!!!』











 恐怖と絶望に歪んだ彼の顔が、忘れられないのだろう―――






















    1




「マスター?」

「!? っ」

 突然掛けられた声に、ビクンと身体が跳ねた。

 夢、か?今のは……

「どうしたんですかマスター。曲、もう終わっちゃいましたけど…」

 不思議そうな顔をして、彼が首を傾げる。その動きにつられるように、視界の先でサラリと青い髪が揺れた。
 ああ、そうだ。今は一通り完成した曲を、彼に歌ってもらっていた最中だった。
 目の前の、普通の人間ではありえない色彩の髪。青よりもなお鮮やかで、どこか透明感のある深い瞳。四肢も、服も、彼を構成する全てに、僕には到底理解し得ない科学の真髄がこれでもかと詰め込まれている。
 そう、彼は人間ではない。アンドロイドでもない。
 単なる機械人形ではなく、ソフトをパソコンにインストールすることによって実体化する、特殊なホログラムによって四肢を構成された、ボーカロイド『KAITO』。
 僕が僕の意志で購入した、僕だけのボーカロイド。
 僕だけの……歌姫。

「いや、少し考え事を…ね。聴きながらどうしたらもっと君の歌が良くなるかを考えてたら、ついのめり込んでしまったみたいだ」

 そんなこと微塵も考えてなかったのに、舌はスラスラと嘘を並べ立てる。きっと地獄の閻魔が聞いたら、真っ先に舌を引っこ抜かれているだろう。
 けれど僕の目の前にいるのは地獄の閻魔ではなく、マスターだけを信じ、マスターにだけ従う、何処までも従順で素直なボーカロイドだけ。
 彼は僕の言葉をすっかり信じ込み、「そうでしたか。そんなに真剣に考えて下さって、嬉しいです」なんて、無邪気に喜んでいた。
 可愛い可愛い僕のボーカロイド。
 澄んだ青空の色彩を纏った外見と同じように、穢れなんて何一つ知らない彼。
 そんな自分を所有している者がどれだけ穢れているかなんて、きっと想像すらしていない。

「少し、休憩しようか。その後、もう少しだけ曲を調整し直そう」

 彼の調教を始めてから既に四時間が経過している。いくら人間よりも喉への負担が格段に少ないからといって、あまり彼を酷使するようなことはしたくない。
 彼は、僕にとって全てなのだから、彼の負担になるような真似はしたくなかった。
 そう告げると彼は花開くように笑い、「じゃあコーヒー淹れて来ますね」と立ち上がった。
 最近、彼はコーヒーを淹れることを覚えた。しかもコーヒーメーカーではなく、サイフォンで。どうやら普段から僕が自分で淹れているのを見ていて、やってみたいと思ったらしい。初めの頃はとても飲めたような物じゃなかったが(それでも彼が僕のために淹れてくれた物だから、全て飲んだけど)、回数を重ねる毎にコツを掴んできたのか、今では格段に腕が上がっている。
 そして僕が美味しいと告げる度に、彼はこの世の幸せを独り占めしたかのような満面の笑みを浮かべてくれるのだ。
 彼がコーヒーを入れている間、僕は冷蔵庫から彼の大好物のアイスクリームの一つを取り出す。今日はネットでお取り寄せしたプレミアムアイスで、味はバニラ。それをスクープで二回ほど掬って耐熱の容器に移した。
ミルクと砂糖を大量投下しないと飲めない彼には、それらの代わりにこれをコーヒーに入れてアフォガートもどきにしてあげると、とても喜ぶのだ。

「マスター、出来ましたよー」

「ああ、うん。こっちも用意できたよ」

 今日はプレミアムアイスだよ、と容器を見せると、あからさまにカイトの表情が綻ぶ。ありがとうございますマスター!と頬を高揚させながらサイフォンとカップを持ってリビングへと向かう彼の後姿は、兎のようにピョコピョコと弾んでいた。








「この後は夕食までみっちり調教かな」

 二杯目は普通にバニラアイスだけで堪能している彼の横で、ゆっくりとコーヒーを飲む。芳醇な香りと豆本来の味が充分に引き出されたコーヒーは、多少冷めても充分に美味しい。

「コンクールまで、後僅かですもんね」

「君の歌声をもっとたくさんの人に聞いてもらうためにも、今頑張らないと」

 曲は既に完成しているので、後は微調整を加えるだけなのだが、どうせならば時間が許す限り、最高の調教を彼にしてやりたかった。
 歌は彼にとって存在意義であり、喜び。
 それを与えてやれるのはマスターである僕だけならば、己が持てる全てをもって最高の物を与えてやりたい。
 僕のカイトはどのボーカロイドよりも素晴らしいんだって、他の奴らに見せ付けてやるのだ。


 そう……どの『KAITO』よりも―――


「マスター?また、考え事ですか?」

 心配げな表情で僕の顔を覗き込んでくる彼に、僕は思考の歪から我に返る。

「えっ、いや…別に、」

「そうですか?何か難しそうな表情をなさっていたので……今は休憩中なんですから、考え事は駄目です。それでは休憩になりません」

めっ、と一体何処で覚えてきたのかまるで母親のような仕草で注意をする彼に、僕はいつの間にか強張っていた肩の力を抜く。
 そうやって君は、いつだって無意識に僕を救ってくれる。
 それが、何よりも愛しくてならない。

「ああ、そうだね。今は休憩中だものね」

「そうです!アイスだって溶け掛けは美味しいけど、溶け切ってしまえばただのバニラジュースなんです!」

 スプーン片手にそう力強く断言する彼に、僕はパチパチと瞬きを二回繰り返す。

「……ごめんカイト、今のはちょっと意味がわからない」

「えと…そうですか?」

 そう言って首を傾げる彼が、可愛くてならない。













 僕が彼を購入したのは、半年前。
 偶然通りかかった中古ショップの店頭で、楽しそうにデモソングを歌っていた彼に、目を奪われた。
 観客のいない店先で、それでも構わず音楽に合わせイキイキと歌い上げる彼は、とても綺麗で……
 食い入るように見つめ続けていた僕は―――気が付けば、彼の購入手続きを済ませていた。
 新品ではない、中古のパソコンソフト。
 彼はアンドロイドでは無いので、購入した僕に手渡されたのは片手で持てるほど小さなパッケージ。中に入っていたのは分厚い説明書と、一枚のROMのみ。
 時折街でそれらしい存在を見掛けたことはあっても、直接実体化ホログラムに触れた事が無かったので、インストールした後どうなるかなんて想像も出来なかった。
 いつもはそんな物見なくても何とかなるが、今回手にしたのは僕には未知のシステムだから軽く説明書に目を通してから、パソコンにROMを入れる。
 小さな機械音と共に、ROMがパソコンに吸い込まれていく。
 やがてパソコン画面にメッセージが表示され、説明書に書かれていた通り、見慣れたインストール画面に導かれるように、次々と項目を入力していく。普通のソフトをインストールするのとまったく変わらない手順に、僕の疑念は更に高まった。
 本当にこんなことで彼が僕のものになったのか、甚だ疑わしいな……そう、考えた矢先。




「初めましてマスター。VOCALOIDOシリーズ00-01『KAITO』です」




「!?  っ」

 彼は、なんの前触れも無く僕の前に姿を現した。
 確かに画面では『VOCALOID KAITOを起動します』と表示していたけれど、こんなにも音も無く現れるとは思ってもいなかった。
 漫画やアニメのように派手にとまでは言わないけれど、せめて予兆くらいあっても良いと思う。正直、あまり心臓によろしくない。
 そんな僕の心境などまったく理解できないのか、突如として現れた彼は、驚きのあまり微動だに出来ない僕をジッと見詰めていた。
 青い髪、青い瞳の、端正な顔立ちをしたボーカロイド。
 白いコートに青いマフラーは目にも鮮やかで、とても彼に似合っていた。

「あの、マスター?」

 やがて、数分に及ぶ沈黙に耐え切れなくなったのか、僕のマスターでは無いのですか?と不安げな表情を浮かべる彼に、僕は慌てて声を上げる。

「いや、間違っていない。僕が、君のマスターだよ」

 不安がる彼を少しでも癒そうと出来るだけ柔らかな微笑を浮かべると、ようやく緊張を解したのか、少しばかり強張っていた彼の顔が綻ぶ。
 その仕草全て、作り物とは思えないくらい表情豊かで、本当にこれがホログラムなのかと先程とは別の疑念が僕の中に渦巻いた。







 ああ、そうだ……彼らはどの機械人形達よりも感情豊かに、深みのある歌を奏でるためだけに、そう作られている。
 まるで、『人間』のように。






「なら、良かった……これから宜しくお願いしますマスター」



俺、貴方のために精一杯歌いますからと、初めて会ったにもかかわらず僕を心から信頼しきった笑顔を向けてくる存在に―――何故か僕の胸は、キシリと痛んだ。






 こんな感じで始まります。
 ラストはどうなるのか、まったく見当も付きません(笑)←オイ






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