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七夕話マスカイ編(笑)
本当はこっちのが先に思いついたんだが、気が乗らなかったから後回しになったorz


最近原稿ばっかで疲れ果てたから、一日で二本うp出来るか大いに不安だったんだが、あざらしやる時はやるらしい(笑)







七夕とテルテル坊主







 7月6日の夜。
 休みボケを抱えたまま週始めの仕事を無事に終え、少し遅めの夕食を摂った後。

 リビングのパソコンで新しく取り掛かっていたカイトの曲を手直ししていると、少し前まで直ぐ傍にいた筈の存在が消えていたことに気付いた俺は、作業の手を一旦止めてくるりと周囲を見渡した。
 しかし、印象的な青い姿は何処にも無い。
 普段ならば、たとえ構ってやらなくても俺の近くにいるコトを望むカイトにしては、かなり珍しい行動。
 だからこそ何となく気になって、俺は作業の手を完全に止めると椅子から立ち上がった。
 
 大して広くも無いマンションだから、探し出すのもそう大変なことじゃない。
 案の上ものの数分も立たずして、目当てであるカイトの姿を発見した。
 






 
 ちなみに居たのは――――ベランダ。







「お前、何やってんだ?」

「あ…マスター。」


 背後から掛けられた俺の声に反応し、すぐさま振り向いたカイトの手には、なにやら白いものが握られている。
 その見覚えのある形状に眉を顰めると、カイトは絵へへと苦笑いをしながらゆっくりと手の平を差し出し、開く。





 そこには。





「……テルテル坊主?」

 そう、以前梅雨の時期に教えたおまじないの一種『テルテル坊主』が、カイトの手の上に存在していた。

 確かに今は露真っ只中で、今年は季節感を現そうと気象が躍起にでもなっているかのようにドカドカと雨が降り、空は八割方曇り空に覆われている毎日だ。
 太陽の下で布団を干すのが大好き(そしてその布団に寝転がるのが大好き)なカイトが、休みの度に憂鬱そうな表情を浮かべて羽根布団を抱き締めているのを何度か目撃しているから、またテルテル坊主を飾ろうとするのは別におかしなことではない。






 が、しかし。







 そんなカイトの後ろでそよそよと風に揺れる物体が、物凄い異彩を放っていたのだ。

 と、いうのも。



「カイト…」

「ハイ、なんですかマスター」

 無意識に小首を傾げる仕草が何とも無邪気で、思わず無条件に甘やかしてやりたい衝動に駆られるが、とりあえず今は現状の解明をする方が先だとその耐え難い衝動を無理矢理横に置く。

「俺、テルテル坊主は窓に飾るって教えたよな?」

「ハイ。去年一ダース飾ったので覚えてますよーマスター」

 初めて作るテルテル坊主に夢中になったカイトが、勢い余って夢に見そうなほどのテルテル坊主一ダース(12個)を作成したのは、まだ記憶に新しい。

「じゃあ訊くが、」

「ハイ、」

「なんで笹の葉にテルテル坊主が一ダース近く飾られてるのか、100文字以内に今すぐ答えろ」

 そう、俺が感じた大いなる疑問というか違和感。
 通常ならば七夕飾りは折り紙で作られた色とりどりの飾りと短冊が当たり前なのに、会との背後にある笹には、つやつやとした緑色の葉と飾りにまぎれて、10を越えるテルテル坊主が、当たり前のように笹飾りと一緒に吊るされていたのだ。




 明日は世間でいう七夕で。
 週始めの疲れで今の今まですっかり忘れていたが、カイトは病院近くの幼稚園の子供達からおすそ分けと称して、七夕用の笹と飾りを貰っていた。
 俺はそんな行事に今更興味は無いが、見るもの全てが新鮮に映るカイトには、そんな些細な行事でさえ興味をそそられるものに違いなくて、出来る限りそういったものに触れさせてやりたい気持ちはあるから、カイトが望めばなんでも与えてやっていた。
 今回も「七夕飾りを貰った!」と目を輝かせて喜んでいたカイトの頭を撫でながら、家に帰ったらベランダに飾ろうなと言った覚えがある。



 それは別にいい。
 むしろ、そんな行事を率先してやるカイトはとても微笑ましい。









 が、だ。





 テルテル坊主と七夕を合体させるのはいかがなものか!?





 カイトのやることはで着る限り温かく見守ってやるつもりではあるが、今回のはあまりにも突っ込まずにはいられなくてそう言えば、カイトは一瞬キョトンとした顔をしてから、にぱっと笑った。


「ハイ、わかってますよーマスター」

「ハ?」

「オレだって七夕とテルテル坊主さんを合体させるのはちょっと変かなーとは思ってます」




 それくらい知ってますよ!とテルテル坊主を握り締めながら胸を張るカイトに、俺の疑問はますます膨れ上がる一方だ。




「……じゃあなんで、」

「ん~明日は離れ離れになったお二人が、年に一度だけ会える大切な日ですから」

 だって天気が晴れじゃないと会えないのでしょう?と、いつの間に七夕伝説を仕入れていたのか、そう訊ねてくるカイトに、だからかとほんの少しだけ納得する。

 窓から空を見上げれば今日も梅雨らしく星一つ見えない曇り空が広がっていて、このまま行けば明日も天気は曇りか雨だろう。

 七夕伝説では、『空に天の川がかかるその日だけ、二人が会える』とされている。
 当然、雨か曇れば夜空に天の川はかからない。
 カイトが思わずテルテル坊主を作ってしまいたくなる気持も、判らなくは無い。


 判らなくはないものの、やはり笹に飾り付けられたテルテル坊主というのは見た目からして何とも妙で。しかもテルテル坊主の重量があり過ぎるのか、笹が必要以上に撓っているのも奇妙で。
 コレを見た近所の人がなんと思うか、ちょっと不安になってくる。

「ん?なぁ……短冊は飾らなくていいのか?」

 あまりにも斬新過ぎる笹飾りに辞めろというべきかカイトの主張を尊重すべきか微妙過ぎる心の葛藤をしていると、ふと、他の飾りはあるのに何故か短冊だけが見当たらないことに気付いた。
 笹飾りに願いを込めた短冊を飾るのは、七夕の醍醐味だ。
 それなのに一枚たりとも見当たらないそれに、俺は首を捻る。



 するとカイトは、ああとばかりに頷いた。

「いいんです。オレの願いは一つだけですから」
 
 それにもう叶ってますし、オレは十分幸せですからと、本当に幸せそうに笑う。

「俺の願いよりも、離れ離れになったお二人のお願いを叶えてあげる方がきっといいです」




 ああ、そうか。
 カイトの言い分に、俺は改めて納得する。

 
 心から愛し合う二人が離れ離れにされた、哀しい七夕伝説。
 二人が触れ合えるのは一年に一度、夜空に天の川がかかったその時だけ。
 たとえ心に深い傷を負っていても、純粋無垢なところはいつまで経ってもカイトは、その物語に深く共感してしまったのだろう。








 出来ることなら、二人をちゃんと会わせてやりたいと。







「……そっか」

 そんなコトを聞かされて、世間体が悪いから止めてくれなんて言えるわけがなく。
 今の俺に言えることは、唯一つだけで。


「笹の枝はあんまり強くないんだから、飾り過ぎるなよ?」


 
 ていうか、今の状態でかなりギリギリのところだと思うんだが。





 そう言って背後の笹を指差すと同時に、か細い笹の枝がまるで絶妙のタイミングを計っていたかのようにポキリと折れ。






「!? っっっっ」



 ひゃああああああああ!!!!!というカイトの絶叫が、梅雨の夜空の下に大きく響いた。














 翌日。
 実に10年ぶりに七夕当日に快晴を見せたのはカイトのおかげだと思ったのは、俺だけの秘密。




                                               2009.07.07 AK



 ひたすらにほのぼのますかい。
 獣医マスターのトコはほのぼのがよく似合う(しみじみ)






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