ADMIN TITLE LIST
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




スミマセン一年ぶり?いやもしかしたらもっとか??
とにかく久々の更新です。
ようやく抱えていた締切が一段楽したので連載再開します。

今年中に完結できたらイイナァ←マテ







 街の一角の、細い路地に入ってすぐの雑居ビル。
 カラスのように真っ黒にペンキで塗られた扉を抜け、地下へと続く階段を下りきると、そこには三人ほどが座れるソファーとテーブル、向かいにはカウンターがあり、髭を生やした男性が緩慢な仕草でグラスを磨いていた。
 そのソファに見知った顔を見つけ、ホッと胸を撫で下ろす。
 正直、こういった場所には足を踏み入れたことがないので、少しばかり緊張しているのだ。

「よう、カイト。ちゃんと来てくれたんだな」

 程なくしてこちらの存在に気づいたターゲットが、満面の笑顔で手を上げる。

「……あまり来たくありませんでしたけど、一応約束ですし」

「うんうん、お前そういうトコ律儀そうだモンなー。あんだけ一方的だったら、普通は無視するぜ?」

 そうでしょうねとは口にせず、曖昧に笑い返すだけに留める。
 春日悠久が今回のターゲットでなければ、僕は一方的な約束を律儀に守る必要も、この場所に足を踏み入れることも無かっただろう。
 全ては彼が今回のターゲットだから。



 執行か、否か。



 そんな思惑などまったく気づかず、悠久は幾分興奮した様子で僕の手を取ると、奥の通路へと僕を誘った。

「バンド仲間はもう中に入ってんだ。お前の話したら大ノリでさ!」

「……あの、僕は本当にこういったことは経験がないので」

 そんなド素人を誤魔化しのきかないライブに参加させるというのは、かなりのリスクが伴うと思うのだが。

「心配すんなって!お前の歌唱力は俺が保障する!絶対上手くいくからっ」

 貴方に保障されても、何の保障にもならないと思うのは僕だけだろうか。
 サポートであり監視者でもあるリンとレンは問題無いと言っていたが、死神の僕がこんな目立つようなまねをして本当に大丈夫なんだろうか、そればかり気になって仕方が無い。後になって処分されるようになったらどうしようか。
『処分』とはすなわち、人間でいう『死』だ。
僕達死神には死は一番身近であり、一番遠いものでもある。
というのも、僕達死神には、『死』に対する恐怖というものが存在しないからだ。
けれどコレまで僕が知る限り、見知った死神が処分された例は一度も無いから、実際どうなるのかは経験をしてみない限り、想像もつかないのだけれど。
 出来れば痛くなければいいなぁと思いながら、僕は案内された個室に入る。


 そこには、各々の楽器を手に持った人間がいた。


 皆、春日悠久とそう変わらない年齢のようで、おそらく彼らが『学生時代から組んでいるバンドメンバー』なのだろう。
 とりあえず当たり障りの無いよう、笑顔で挨拶をしてみた。

「えと、初めまして。カイトです」

すると、いっせいにこちらに注目の視線が向けられる。
突き刺さりそうなくらい強い視線で見つめられ、僕は一瞬たじろいでしまった。
こんな場面をメイちゃんに見られたりしたら、絶対『何死神のくせしてガンつけられたくらいでビビッてんのよ!』とかいって怒られるに違いない。

「へぇ~マジでイケメンじゃん。ちょっと頼りなさそうだけど」

その中でも真ん中に位置する場所でドラム(多分、あれがドラムなんだろう。本物を見るのは初めてだ)を叩いていた男は、不意に立ち上がって近づいてくると、顔を近づけてマジマジと僕の顔を見つめた後、そんな感想を零した。
多分、貶されているわけではないのだろうが、褒められているようにも聞こえない。

「馬っ鹿。それが歌い始めたらマジすげぇんだって。まるで別人だぜー」

僕のことなのに、まるで自分のことのように得意気に話す悠久に、内心首を傾げる。
人間は、時折こういった不可思議な行動をする。
僕には理解不能でも、ドラムの青年にとってはなんでもないことだったらしく、へぇと感嘆の声を上げると、更に僕に詰め寄った。


あの、顔が…ちか、近いです。


「そんなにスゲェんだ!んじゃあ、カイト…だっけ?自己紹介代わりに一発歌ってみてくれよ」

 そう、言われても……すぐに歌える歌なんて出てくる筈も無い。
 困った僕は慌てて悠久に視線で助けを求める。
 すると直ぐに気づいてくれたのか、ドラムの青年の肩を掴んで力任せに離すと、まぁ待てと静止の言葉を投げた。

「誘ったのは俺等なんだから、まずは俺等から自己紹介するのが普通だろ?」

 イイ大人なんだからさ、と悠久が片目を瞑って笑うと、心得たとばかりに他のメンバーは頷き合い、突然演奏を始めた。
 演奏とはちょっと違うか。各々楽器を鳴らし始めただけで、多分楽譜なんてものは無さそうだったけれど、何故か妙に音に調和があった。
 一番最初に声を上げたのは、ドラムの人。

「俺はリクだ。見ての通り、ドラム担当」

 たくさんあるドラムを持っていたスティックでテンポ良く次々と叩き、最後にハイハットを鳴らす。
 次に、ギターの人。
 両手を使って、物凄い速さで引いていく。
 僕には絶対無理だ。それか、あと腕が三本ぐらい無いと到底引けそうに無い。

「俺のコトはサングって呼んでくれ。よろしく、新入り」

 最後にベースの人が、低く響きのある音を軽やかに奏でていく。

「アツだ。一応このバンドの纏め役をやってる」

「アツがいなかったら、俺らのバンドなんてあっという間に解散してるよなー」

「俺ら協調性ゼロだもんな」

「……お前らがもう少し協力してくれさえすりゃ、俺の心労も軽減されるんだけどな」

「えへ、ゴメンね♪」

「………。」

 どうやらこのアツという人は、根っからの苦労性らしい。
 口から零れる溜息が、何とも板についている。

「で、ヴォーカルの俺で四人メンバーだ。今回はお前が加わって五人、だな」

 改めて宜しくと握手を求められ、反射的に手を出す。
 ギュッと強く握られるのと同時に目前でニヤリと笑われ、その表情がどうも『逃がさねぇからな♪』とでも言っているようにしか見えなかった。





 こうして、僕のイレギュラーは幕を開けた。










| HOME |


Design by mi104c.
Copyright © 2017 ぼかろ家, All rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。