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続きです。
今が2月とかいうのはすべてスルーの方向で。






つきたてもち、食いたい。。。。。。








 家族の絆(仮)2





「…こうやって兄貴と餅つきすんのも、久しぶりだよな」

「俺はまだ当分やる気は無かったけどな」

 慣れた手つきで腰紐を左右に回し、素早く襷掛けをして袖を固定する。
 こんなことをするのも学生以来で、手の平に伝わる杵の重さが妙に懐かしく感じるが、だからといって正月から肉体労働はしたいとは、到底思えないわけで。

「いーじゃんかよー親父も年だし、どうせ滅多に帰ってこないんだから、正月くらい俺と一緒に餅つきしよーぜ♪」

 お前は何で元旦からそんなにテンション高いんだ?と問いただしてやりたくなるほどやる気に満ちている弟の姿に、肩に杵を担ぎながら俺は深々と溜息を吐いた。
 そんな俺達を、直ぐ側でニコニコと笑いながら眺めているカイト。
 ちなみにカイトも俺と同じく着物に着替えさせられていたのだが、何故か割烹着と三角巾も着せられていて、格好だけなら今にも餅つきの返し手役でもやりそうだ。

「お前…それ、妙に似合うな」

 流石に着物は男物だが、その上から着せられたそれを身に纏うカイトの姿に、違和感は無い。あまりにも似合い過ぎて、一瞬違和感を感じなかったことに、かえって違和感があったくらいだ。

「そうですか?えへへ、実はめいちゃんもお揃いなんですよー」

 裾にフリルが付いた割烹着を両手で広げ、その場でくるりと一回転してみせる。
 どうやらそれが女性物だという意識は、これっぽっちも無いらしい。

「マスターも、お着物すっごく似合ってます!」

 なんか『着られてる感』大有りなオレと違って、堂に入ってるというか…と呟くカイトに、俺は思わず苦笑を零す。

「まぁ、実際慣れてるからな」

 早々に跡継ぎから戦線離脱したとはいえ、仮にも坊さんの息子だし、そんな理由で着物は昔から事ある毎に着せられていたから、久しぶりに袖を通したところで今更違和感なんてある訳が無い。

「カイトー俺は俺は??」

 そんな会話をしていると、横から慶が口を挟んできた。
 どうやら構って欲しいらしい……子供かお前は。

「えーっと……慶さんは…あんまりいつもと変わらないと言うか…、」

「えええええ~~~~!!!俺だって今日下ろしたての着物なのに…」

 大げさなくらいにがっくりと膝を落とす慶に、カイトは慌てて「あああすみませんんんん~~~!」と欠片も悪くないというのに慌てて謝り始める。

「カイト、お前は全然悪くねーんだから謝る必要なんて無い。慶もワザとらしく落ち込むな、杵でドタマカチ割るぞ」

「いや兄貴……それは流石の俺でも死ぬって」

「安心しろ。そしたら線香くらいはあげてやる」

「マスターって、慶さんだけには厳しいですよねー…」
 

 何を言うか。正しくは兄の愛だ。


 とまぁそんな感じで遊んでいると、母屋から蒸し上がったもち米が入った蒸し器を持ったメイコさんが、カラコロと下駄を鳴らしながらやってきた。親父と二人で朝から散々酒を飲んでいたらしいが、その足取りはそんなことなど微塵も感じさせないくらい軽やかだ。

「は~い重労働組、お待ちかねのもち米よん」

 この家に着てから一年以上が経過しているからか、その裾裁きは慣れたもので、カイトと同じデザインの割烹着に身を包み、手際よくもち米を臼へと移す。やけに手馴れたところを見ると、毎年年末に行われる鏡餅用の餅つきの時も手伝っていたのだろう。
 先端をお湯で濡らした杵で、臼に入ったもち米を、体重をかけて潰していく。
まずはこうやってある程度もち米を潰してからじゃないと、おなじみの餅つきは出来ない。
おいしい餅の作り方は、まず『手早く』『丁寧に』が第一条件なのだ。

「お、久々でもやり方はきっちり覚えてるみたいだな」

 返し手用のぬるま湯を桶に張りながら俺の様を見る慶の言い様に、俺は手は止めずに思い切り眉を歪める。

「そりゃ…あんだけガキの頃からやらされてりゃあ、嫌でも身体が覚えてるだろ」

 家が寺ってせいもあって、昔からウチで搗いた餅を欲しがる人達はたくさん居る。いわゆる『縁起物』ってヤツだ。そのせいで晦日・大晦日ともなると、鏡餅用と近所に配る用の餅を俺と親父と慶の三人でひたすら作るのが、当たり前になっていた。
 もっとも、俺は数年前から家を出ているので、今は親父と慶、他に近所の人達が手伝いに来てるらしいが。

 臼の周囲を回るようにして偏りが出ないように満遍なく潰していくと、やがておはぎの中身のような中途半端なもち米が出来上がった。

「なんだかこの時点でも十分美味しそうですねぇ」

 臼の中にある半端な状態のもち米を覗き込みながら、カイトが呟く。
 ああ、そういえばお前、お袋が作るおはぎ好きだったっけな。

「何言ってんだ!つきたての餅はマジで美味いぞー大根醤油きな粉餡子選り取りみどりだ!」

「そうなんですか?」

「あら、カイトはつきたてのお餅、食べたこと無いの?」

 餅つき組の横で作業するための台を用意していたメイコが(ドンだけ仕込んだんだお袋)、厚手のビニールを敷きながら振り返る。

「ん~ウチには餅つき機は無いからなぁ」

 確かにつきたては魅力的ではあるが、年に数回しか使わないもの(しかもデカイ)をわざわざ買おうとは思わない。

「あ、でも年末に切り餅は食べました。焼いてお蕎麦に入れて」

 あれも美味しかったですよね~と笑うカイトに、つられてヘラリと笑い返す。
 毎度思うが、どうしてコイツの笑顔は癒し効果が抜群なんだ以下略。

「んなスーパーで売ってる大量生産の餅なんか目じゃねーぞぉぉ?なんせ添加物不純物防腐剤一切無し、100パーセントもち米オンリーで作るからな!」

「はぁ……そういうものなのですか?」

「まぁ…抜群に美味いことは確かだな」

 どうやら弟の説明では、いまいちピンと来ないらしい。
 小首を傾げて俺を仰ぎ見るカイトの青い瞳は、明らかにキョトンとしていた。

「とにかく、食べてみればわかるよ。オラ慶!始めっぞ!」

 説明するのも面倒だし、実際作って食わせた方が格段にわかり易いと踏んだ俺は、さっさと自分の仕事を全うすることにした。
 杵をぬるま湯に付け直してから、抱え上げる。

「ちょっ、随分態度が違うんじゃありませんかお兄様ッッ!!」

「ウルセェ!俺は区別してるだけだっっ!ぼやぼやしてるとマジでドタマ勝ち割っぞ!!」



「……カイトのマスターって、たまーに激しいわよね」

「………ウン。ていうか、慶さんと話す時だけなんだけどね」

 



 そんな感じで、半ばヤケクソで搗いた餅は、この上なく良い出来で。

 初めて食べるつきたての餅に偉く感動したカイトが「マスター!『お餅つき機』ってやつお年玉でくださいっっ!!!」なんて、一体誰に入れ知恵されたのか一発モロ判りなことを言い出したのは、またあとの話。




2010.02.05 AK






 つきたてもち、美味いッスヨね!






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