ADMIN TITLE LIST
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。




キリが良かったのでUP。
コレを逃すと確実に週明けになると思ったので。

このターンは第三者視点です。
続きを読もうと思った豪気な方は「続きを読む」からどうぞ~
「もういい!どうせお前等にとっては遊びの延長なんだろっ」



 そう怒鳴り散らして悠久(ゆうき)がスタジオを飛び出したのが、一時間前。
歩き慣れた街を目的もなくさ迷っていた彼は、己が発した先程の言動を早くも後悔していた。



 仲間達も、悪気があったわけでは無かったんだろう。
 単なる日常会話の中でふと零れてしまった愚痴の一つに過ぎないことくらい、悠久にだってわかっていた。
 なかなか売れないライブチケット。
 デモテープを何度送っても、一向に返事の無い音楽事務所。
 大会に出てもいい結果は出ず、一番良くても三位止まり。
 ライブも練習も侭ならないからと、まともな職には就かずに皆バイトで必死に食い繋いでいる毎日。
 バンドに多少の不満が出ても仕方が無い状況だ。

 それでも、

「才能無いなんて自分で言ったらおしまいだろうがっ!」

 憤りをぶつけるように、足元に落ちていたジュースの空き缶を力いっぱい蹴り上げる。
 カァンと小気味良い音を立て、中身の入っていない缶は蹴られる動きに逆らう事無く宙に舞い、そして―――

「あ……、」

 斜め前を歩いていた男が持っていた、トリプルアイスにジャストヒットした。
 当然、空き缶に弾かれたそれは重力に導かれるままに地面へと落ち、最終的にペシャリと潰れた音が微かに響いた。

 その一部始終を目の当たりにした悠久が、胸中で『やべっ!』と叫んだと同時に、

「ああああああああ―――っっっ!?僕の…僕のトリプルがっっ!!!」



 落ちたアイスの持ち主である端正な顔立ちをした背の高い青髪の男は、その外見を大いに裏切る情けない絶叫を上げた。




















「えーと、悪かったよ……いや本当にマジで」

 何で俺はこんな所で野郎と向かい合ってるんだろう。
 まぁ、俺が悪いんだけど。

 女性が好みそうな、ピンクと白を基調にした店内。
 周囲にはもちろん女性の姿しかなく、たまに見かけてもやっぱり女性同伴ばかり。
 心の中で溜息を吐く勇気の目前には、満面の笑みで色鮮やかな塊が三つも搭載されたアイスを舐めている男……悠久によってアイスを台無しにされた青髪の青年の姿があった。

「いいえ、代わりの物を買って頂いてありがとうございます」

「ホント、悪かったな。まさか蹴った空き缶がお前のアイスにヒットするとは夢にも思わなくて」

「僕も、まさか購入して一口も食べないうちに地面に御馳走する羽目になるのは思いもしませんでした」

 小さなスプーンでチマチマとアイスを掬いぱくつきながら返された言葉は、朗らかな笑顔を浮かべている割に青い眼は一欠けらも笑っていなかった。


(怒ってる……これは紛う事なくアイス台なしにされたこと恨んでやがるよコイツっ!?)


なまじ顔が整っている分、余計に迫力がある。食い物の恨みはマジで恐ろしいんだと、悠久はこの時心底実感した。





「…で?」

 すばらしい勢いでトリプルアイスを食べ終えた青年が、残ったコーンを齧りつつ声に疑問を乗せて悠久に問い掛ける。

「へ?」

が、前触れもなく問われても意味が判らなければ答えようがなくて、悠久は素っ頓狂な声を上げた。

「へ?じゃないですよ。わざとじゃないにしろ、貴方にあんな行動を取らせた原因くらいはあるんでしょう?」

「あ、いや、まあ・・・」

 確かに自分はアイス目掛けて缶を蹴ったワケじゃない。抑え切れない感情を手近にあった缶に向けたら、運悪く青年のアイスに当たってしまっただけだ。

「僕がものすごぉぉぉぉく楽しみにしていたアイスを、食べる直前で無情にも奪ったんですから、理由くらい話してくれても罰は当たりませんよね?」



 ……あの、笑顔が半端なく怖いんですが。



 なんだか青年の背後に、紫のオーラが漂っているような気すらして、悠久は頬を引き攣らせる。

「な、なあ、俺ちゃんとアイス弁償したよな?」

「ハイ、とっても美味しかったです。ご馳走様でした」

 座ったままではあったが、深々とお辞儀をしながら御礼を口にする。

「じゃあ別に…」

 さっきの件はチャラになるんじゃ…と言い掛けた悠久の言葉を、青年が遮る。

「でも、僕が購入したアイスが戻って来たワケじゃないですし、僕があの瞬間に受けたショックはトリプルアイス一つくらいじゃ癒されません」

「え?」

「待ち望んで待ち望んで、ようやく手に入れて喜びを噛み締めてた所を邪魔されたあげく、それをダメにされたら誰だって腹が立つでしょう?」

 つまり、世の中そんなに甘くないってことです。

「ええっ!?」

 それってもしかしなくても、さっきの件を全然許してないってことか?!

「はい。」

 ニッコリ、と。
 それはもう素晴らしい笑顔で肯定されても、どう返せば良いのか判断が付かない。

「あとトリプル10個奢れと言ってるワケじゃ無いんですから、構いませんよね?」

 それとも、本当に10個奢ってくれますか?

 青年の目は本気だった。
 トリプル10個なんて食べられるのかお前はっ!?と訊きたい気持ちは多々あったが、そんな勇気はなかった。
 というより、これでもしも奢る方を選んだとして本当に食べ切られてしまったらと考えると……金銭的にも精神的にも、大ダメージを食らうこと間違い無しだ。

「それに、」

「……、」

 一体これ以上何を言われるのだろうかと、悠久は固唾を飲んで青年の言葉を待つ。
 けれど彼の口から出た言葉は、悠久にとってかなり想定外なものだった。

「イライラの元は、誰かに話すと少しなるって言いますし、コレも何かの縁じゃないかなぁと思うのですが、いかがでしょう。僕に話してみませんか?」

 まあ話していただいても、僕には聞くことしか出来ませんけどね。


 そう言って青髪の青年―――カイトは、自分のターゲットに向けて天使のような微笑を浮かべた。





[3に続く]

※やはりカイト兄さんにアイスフラグはもう必須事項だと思うんだ。




















管理者にだけ表示を許可する




| HOME |


Design by mi104c.
Copyright © 2017 ぼかろ家, All rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。