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意外と好評だったのでまた更新しちゃうぜイェア!

今回はマスターの動物病院の一日を、カイト兄さんが御紹介。
ほのぼのラブラブ。
どうやらこの二人はいつもこんな感じらしい。
須藤さんお気の毒(笑)

あ、ちなみに此処のマスター『杜乃』は苗字ではなく名前です。
苗字は……忘れたんで一生懸命思い出そうとしている最中←オイ
昔オリジナルで書こうとしていた主人公の名前を、せっかくだからと漢字を変えてリサイクルしたのですよ。
拝み屋の息子設定だったんで(そこから『寺の息子設定』も来ていたり)ちょっと豪華というか渋いというか…そんな苗字だったような(悩)
そのうち思い出したらこっそり付け足しときます。
[午前の診察]



「長谷川クオンくーん、診察室へどうぞ~」

 今日もマスターのどーぶつ病院は、朝からたくさんの動物さん達と飼い主の皆さんで賑わっている。
やってくる動物さん達は、みんなどこかしら身体に異常があったり、怪我をしている方達ばかりなのであまり喜べないけれど、マスターいわく『閑古鳥が無く状態じゃ、俺は御飯、お前はアイスが食えなくなる』らしい。アイスが食べれなくなるのは困るので、せめてやってきた動物さんたちが元気になるのを日々願いながら仕事をこなしていく。
 もっとも、オレに出来ることなんて入院患蓄の皆さんのご飯と受付、後はたまに歌を歌うくらい。動物さん達の言葉はわからないけれど、酷く吠えたり元気が無い動物さん達に歌を歌ってあげると元気になってくれるみたいで、オレは病院のお仕事の中でそれが一番嬉しかった。
あ、もちろん受付だって色んな人や動物さん達と会えるし、ご飯をあげるのだって楽しいのだけれど、やっぱり歌を歌うことが一番楽しいと感じるのは、オレがボーカロイドだからだろう。

「ほいカイト、薬用意出来たぞ」

「あ、ありがとうございます」

 真っ白な看護師用の制服に身を包んだ須藤さんが、背後の薬剤室から白い袋に入った薬と一枚の紙を、透明なトレイに載せて渡してくる。
 薬に添えられた紙には、処方した薬の効果や容量、成分、注意点などが事細かに書かれている。何気ない物だけど、コレを添えるだけで飼い主さんは随分安心する。
 世間ではギゾウモンダイが騒がれているかららしい。

「えーと……お待たせしました、加藤チビさ~ん」

 薬の表面に書かれた名前を読み上げると、手前のソファに座っていたおばあちゃんが、赤い首輪にリードを付けた豆柴を抱えながら、ゆっくりとした足取りで近付いてきた。

「お薬3日分出ていますので、朝と夜の二回、食後か、もしくはご飯と一緒にあげて下さい。食事はなるべく消化の良いものをお願いしますね?」

 加藤さんはお得意様…っていう表現はちょっと変かもしれないけれど、もう10年も長生きしている豆柴のチビさんの飼い主さんで、定期的にマスターの病院にやってくる。いつもニコニコ優しい笑顔で、でもチビさんの具合が悪い時は血相を抱えて飛び込んできては、マスターに『お願いします、あの子を助けてやって下さい!』とちょっと曲がった背中をさらに曲げて、何度も頭を下げていた。
 加藤のおばあちゃんにとっては、チビさんは家族同然なんだって。
 オレにとってマスターが一番大事なのと、同じような感じかな。

「チビさん、おばあちゃんのためにも長生きしてくださいね?」

 今回の健康診断で、チビさんはちょっとだけ胃腸が弱くなっていた。でもこれは高齢犬にはよく見られる症状だから、そう心配しなくても大丈夫みたい。
 オレがそう話し掛けると、チビさんは小さな舌を伸ばしてぺろりとオレの指を舐めてくれた。どうやらオレの言ったこと、理解してくれたみたいだ。

「じゃあお大事に。おばあちゃんも」

「いつもありがとうねぇ。コレ、先生達と一緒に食べなさいな」

 優しい笑顔で、小さな風呂敷に包まれた四角いものを差し出される。
 多分、おはぎだ。以前にも何回か頂いたことがあって、すごく優しい味がして美味かった。

「うわぁ、ありがとうございます!」

 カウンター越しに頭を下げて素直にお礼を述べると、加藤のおばあちゃんはやっぱりニコニコと笑顔でどう致しましてと言って帰っていった。
 えへへ、今日の休憩時間にお二人と一緒に食べよう。
 マスターはあんまり甘い物好きじゃないけれど、加藤のおばあちゃんのおはぎだけは進んで食べてくれる。
きっとマスターも美味しいって感じてくれているのだろう。


 忘れないようにカウンターの横に包みを置いて、オレは再び仕事に戻った。





[午後の診察]



 お昼の休憩時間に三人でご飯と貰ったおはぎをありがたく頂戴して、三時から午後の診察が始まる。
 午前中ほどでは無いけれど、小さな待合室がいっぱいになる程度にはお客さんがやってきていて、マスターも須藤さんもオレも、息つく暇も無く仕事をこなしていく。

『ほ~ら、そんなに怖がるなって。直ぐに終わるから』

 今診察室に入っているのはまだ生まれて一ヶ月ほどの小さな白い子猫さんで、今日は予防接種を受けにやってきたらしい、のだが……ドアの向こうからは、悲壮感漂う鳴き声と診察台の上で暴れる音が、ひっきりなしに聞こえて来た。
 それから、マスターのちょっと困った声も。
 そんな様子をドア越しに感じ取ったオレはカルテの用意をしていた手を止め、待合所の皆さんに一声かけてから立ち上がる。
今日やってきているお客様方は、皆一度はこの病院を訪れたことのある方ばかりだったので、皆二つ返事で了承してくれた。ありがたいことだ。
 診察室の手前に備え付けられている手洗い場で丁寧に手を洗って消毒を済ませ、ドアを開けた途端子猫が逃げ出したりしないように、中への注意を払いながらすばやく診察室の中に入ると、予想通り小さな猫が必死に四肢を動かして、なんとかマスターの手から逃げ出そうと鳴きながらもがいている。
 その横で、12歳くらいの女の子がどうしていいかわからず、ひたすらオロオロとしていた。きっと彼女は、動物さんを飼うのは初めてなのだろう。

「マスター」

「ああ、カイトか。悪いが頼めるか?」

 無理矢理押さえつけて打つことも可能なんだが、トラウマになったら後々拙いからなと苦笑するマスターに、オレはお安い御用とばかりに笑顔で頷いた。

 目を閉じて、ゆっくりと口を開く。


 そこから紡ぐのは、緩やかなバラード。
 ステージも伴奏も無い小さな診察室の中に、オレの声が響き渡る。


 連れてこられたその子猫は、捨て猫だった。
 古びたダンボールにボロボロの布切れと一緒に入れられて、力無く鳴いている所を彼女が見つけたらしい。
これといった外傷は特に見当たらなかったが人間をやけに怖がるので、きっと拾われるまでに子猫がトラウマになるほどの何かあったのだろうと、少女は言っていた。
 それがどういったものなのかは、此処にいる誰にもわからない。
 でも、子猫は心優しい少女に拾われた。
 怖がる必要なんて、もうどこにも無いのだ。


 歌いながらゆっくりと診察台に近寄り、子猫に手を伸ばす。
 子猫はマスターの中で一瞬ビクリと身体を震わせたけれど、それ以上暴れずに、まん丸な目でジッとオレを見上げていた。
 同時に、マスターが子猫からそっと手を離す。
 けれど子猫は逃げ出そうとしないで、ひたすらオレだけを見つめていた。
 不安と恐怖、そして戸惑い。そんな気持ちが子猫の瞳に浮かんでいた。


 大丈夫、ココには怖いものなんて何もない
 君が怯える必要なんて、どこにも無いよ


 そんな思いを篭めて歌い、子猫の小さな顎の下を伸ばした指で優しく撫でる。
 ふわふわとした毛が指先に感じて、ちょっとくすぐったい。
 しばらくすると、パンパンに膨れて立っていた子猫の尻尾が緩んでいき、見開いていた目がだんだんと閉じられていく。

 
 子猫の心の扉が、少しずつ開いていくのがわかった。


『ナ~…』

 力無い、でも警戒心を解いた鳴き声が歌声の合間に微かに聞こえてきて、自然と嬉しくなる。
 ああ、良かった……この子はわかってくれた。


 ありがとう、君はいい子だね。
 今まで辛かったかもしれないけれど、これからはきっと大丈夫。
 君は、幸せになれるよ


 そう、願いを篭めて歌を終えると、子猫はほんの僅かだけれどオレの指にスリ…と頬を寄せた。

「…マスター、」

 もう、大丈夫ですよと合図をする代わりに呼ぶと、マスターは無言で頷いて迅速な手つきで子猫に予防接種を施していく。
 子猫はもう暴れることも無く、静かにマスターの手に身を委ねていた。



 その一部始終を傍で見ていた女の子は、驚いたような表情でオレと子猫を交互に見つめていた。

 









 役目を終えて診察室を出ると、常連(て言って良いのかな?)のお客様方にワッと囲まれてしまった。

「カイトちゃんの歌、久しぶりに聴いたわ~」

「相変わらずいい声ね~思わず聴き惚れちゃった」

「ねぇねぇ、一度どこかの公民館で歌わない?オバサン聴きに行っちゃうわよ!」



 えと、あの……とりあえずここは病院なんでお静かにお願いします…って、今まで診察室で思いっきり歌ってた俺が言うのは、やっぱりヘンでしょうか?






[業務終了]



 午後八時、業務終了。
 正確には7時が通常診察時間なんだけれど、過ぎてしまうのはいつものことだ。

「あ~今日も疲れたな~」

 首や肩を回しながら溜息を吐くマスターは、本当にお疲れのようだ。
 それはそうだろう。あんなにもたくさんの患蓄さんを一人で診ているのだから。

「お疲れ様です、マスター」

「おう、カイトもお疲れ」

 今日もありがとな、と消毒液のにおいが染み込んだ大きな手で頭を撫でられる。
 子供っぽいと思われるかもしれないけれど、オレはマスターにこうして撫でられるのが好きだった。

「…え~と、俺も一応いるんスけど」

 ラブラブっぷりを見せ付けるのは俺が帰ってからにしてくれませんかね?

 マスターと二人幸せを噛み締めていると、背後から聴き慣れた声が聞こえてきた。
 オレとマスター以外に此処に居るとすると、一人しか該当しない。

「ああ悪い、すっかり忘れてた」

「今日はデート無いんですね須藤さん?」

「チクショー!!!皆して俺を馬鹿にしやがってッッッ!!!」

 絶対新しい彼女作ってやるぅぅぅぅぅ~~~!!!と叫びながら、制服も着替えずに外に飛び出していく須藤さん。
 スミマセン、ちょっとお邪魔虫だなと感じてしまったので、意地悪言ってしまいました。
 まぁでも、いつものことだからきっと明日には立ち直ってくるだろう。

 そんな須藤さんの背中を笑って見送って、オレとマスターは顔を見合わせた。

「さて、俺らも帰るか」

「ハイ」

「夕飯食ったら、ちょっと歌おうな」

「ハイ!ありがとうございますマスター!」




 こうして、マスターとオレの日々は過ぎていく。




                                      2008/03/26 AK
























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