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ようやく続きです。
間が空いてしまった……でもまだまだ悠久ターン。

 俺は過去に三度、同じような経験をした。

 一度目は両親。
 二度目は引き取ってくれた親戚夫婦。
 三度目は、最愛の彼女。
 みんな俺にとって掛け替えのない人達で、無くしたくない存在だった。



―――でももう、誰も居ない。

















「辛いですか?」

 何が?とは返せなかった。
 とぼける余裕も無いくらい、この過去は俺に重く伸し掛かっているから。

「…辛くないって言ったら、確実に嘘だな」

俺のせいじゃないってわかってても、時々考えてしまう。
みんな、俺に関わったから死んじまったんじゃないかって。
俺に愛されたせいで、死ぬ筈じゃなかった場面で死ぬ羽目になったんじゃないかって。

 そんな、確証も現実味のかけらも無いことを。

「では……楽に、なりたいですか?」

「そうだなあ…たまーに思うかな。こんな俺に辛い思い出しかくれない世界と、オサラバしたいって」

 実際、彼女が死んだ時、俺も死んでしまおうかとも考えた。
 でも結局、自分で自分の命を終わらせることは出来なかった。

 俺は、臆病だから。
 俺は、俺が愛した人達の命の上に成り立ってるから。

 運命が二手に分かれたあの瞬間から、俺の命は俺だけの物ではなくなった。
 あの人達の寿命を分けてもらっているからこそ自分は生きているんじゃないかと、錯覚する時があるのだ。
 だから、俺は俺自身の手で楽になることは出来ない。



 それがどんなに寂しくて苦しくて、どうしようもなくても。



「たまに、考える。死んじまうことも充実した人生歩むことも出来ずに、毎日を過ごしてるってあの人達が知ったら、どう思うだろうって」

「死んだらそれで終わりですから、知ることも、今の貴方に対して何か感じることもありませんよ?」

 なんせ、死んでるんですから。
 キョトンとした顔で、当たり前のことを当たり前のように言われると、なんだか自分が馬鹿にされているような気がしてくるのは何故だろう。
 いや、コイツは別に俺を馬鹿にしているわけじゃない。今日初めて会った奴でも、それくらいはなんとなくわかる。
 コイツは、単に頭に馬鹿が付くくらい素直で正直な野郎ってだけだ。
 だから、怒るより先に苦笑が漏れた。
 案の定、青髪の青年は一体何がおかしいのかと苦笑いをする俺を不思議そうに見ていた。
 ホント、ヘンな奴。
 でもなんか憎めない。
 それどころか、彼女が死んでから誰にも言えずにいたことを、全て曝け出したくなる。
 全部吐き出したら、楽になるのだろうか。

「まぁそうなんだけどさ。そんなことありえないって判ってるけど、考えちまうんだよ」

 死んでしまった人達を差し置いて俺はまだ生きてるのに、誇れるような人生を歩んでない。
それに対して責めるような人達じゃないって、わかっていても。

「それに……なんかさ、どんなに頑張ってもここまで不幸に好かれた俺の手からは、『幸せ』ってモノはみーんな逃げちまうんじゃないかって思う時もある。バンドが上手く行かないのも、いつまで経ってもチャンスが来ないのも、メンバーに俺がいるからなんじゃないかって」

 だから余計に、未来に希望を持つことが怖い。
 希望に裏切られて、また潰れそうになるくらいの絶望を味わうのが。

「……でも、手放すことも出来ない?」

 ジッと俺の話を聞いていた青髪の青年が、まるで俺の心を見通したかのような言葉を紡ぐ。
 全てを見透かすような、澄んだ青い瞳。
 見ていると、どんどん口が軽くなって行く気がした。

「……ああ。俺は寂しがり屋で臆病だから、一人で居ることを選べない」

 両親を亡くした恐怖。
 親戚夫婦を亡くした恐怖。
 そして。
 最愛の彼女を亡くした恐怖。
 三つの恐怖は、俺を極限にまで臆病にした。
 人と関わり合うのは怖い。
 でも、一人で居るのはもっと怖い。
 誰かと常に繋がっていたかったのだ。
 他人でもなんでもいいから、一人じゃないという証が欲しかった。
 だから、バンドに固執した。
 気の置けない仲間。
 なんだかんだと言って付き合ってくれる、優しいやつらばかりで。
 どうしても手放せなかった。
 未来に夢を持つのが怖いくせに。

「ホントは、さ。わかってたんだ……俺達にデビューするほどの実力なんか無いことくらい」

 ライブを開いても、チケットはなかなか売れず。
 音楽事務所にデモテープを送っても、興味も持たれない。
 コンテストに出ても、ろくな評価が貰えない。

 本当は、わかっていた。
 バンド仲間との繋がりが切れるのが怖くて、俺が無理矢理存続させ続けてることくらい。
 皆、俺に付き合ってくれているだってことくらい。

「…では、貴方にとって音楽は、仲間との繋がりを保つための『手段』に過ぎないと?」

…なんだろう。目前の青年が俺を見つめる視線と台詞に、いきなり刺が含んだ気がする。なにか、コイツの気に障るようなことを言っただろうか。

「いや…歌は元々好きだし、じゃなきゃ就職もしないで、こんな歳まで続けてない。でもさ、この世界『好き』だけじゃやっていけないのも事実だ。実力と運がなきゃ、好きなことを仕事にするのは不可能なんだよ」

そして俺には、運も実力も無い。
せめてどちらか片方だけでも備わってれば、まだ救いようがあったのに。

 まだ始めた頃は良かった。あの頃は彼女もまだ生きていたし、夢も希望もあった。何より、若さがあった。
 でも今は、厳しく冷たい現実に打ちのめされ、夢も希望も朽ち果て、彼女も亡くした俺しかいない。

「…それでも、歌は好きなんですよね?」

「あ、まぁ。ノッてる時は寝食忘れちまうくらいには」

 急に問われて反射的にそう返すと、青年は同性の俺でも見惚れるくらい綺麗な微笑みを浮かべた。

…と思ったら、ソイツはいきなり俺の手をガシッと掴むと、勢いよく立ち上がった。

「じゃあ、行きましょう!」

「ハ?行くって何処に…」

 あまりにも相手の突飛な行動に思考がついて行けず、呆気に取られてしまう。
が、その青年は俺を強引に立ち上がらせると、有無を言わさず店の外へと連れ出した。
 半ば引き摺られるようにして外に出ると、幸いなことにさっきまで降り続いていた雨は止んだらしく灰色の雲だけが空を覆っていたが、いちいち天気を気にする余裕などその時の俺にはなかった。

「え、あ、オイッ!ちょっ、待てって!行き先くらい言え……、」

 なにせ引っ張られるだけでは留まらず、そいつは俺の腕を掴んだまま人並みを擦り抜けどんどん先へと進んで行くのだ。当然俺は掴まれた腕を離させようともがいたが、その細腕の何処にそんな馬鹿力が隠されていたのか、ビクともしなかった。
 ったく!今日は一体何なんだってんだよっっ?!
 



(……もしかしてコレって実は、新手の人攫いだったりっっ!?)



 そんな目立つ誘拐が何処にある!と、ココに第三者が居たら即突っ込まれそうなことを考えながら、俺は何処とも知れぬ場所に連れて行かれたのであった。








                              意外と力持ち~なカイト兄さん♪




















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